コロナはどのくらい”うつりやすい”ウイルスなのか。

感染した1人から、いったい何人にうつるのか。
いわゆる「うつりやすさ」の指標として、
感染症学では「基本再生産数」と表現します。

 

たとえば、季節性インフルエンザの基本再生産数は「2~3」
これはつまり、インフルエンザにかかった人が1人いたとき、
まだインフルエンザにかかっていない新たな
23人にうつる可能性がある。
それくらいのうつりやすさのウイルスですよ、ということです。


当初のWHOの発表は「12」。最近の研究では「23」。

“The reproductive number of COVID-19 is higher compared to SARS coronavirus. J Travel Med. 2020.”
主に中国からの報告を複数検証して、新型コロナウイルスの基本再生産数を検討した論文です。

 

当初WHOは「1.4~2.5」つまり、1人の新型コロナウイルス感染症の人からは、
新たに1.4~2.5人が感染する可能性を発表していました。
ただし、その後の報告を複数みてみると、実はも少し高い値なのでは?という内容の論文です。

 

実際に論文12例をまとめてみると、新型コロナウイルスの基本再生産数は、
平均値3.28、中央値2.79、という結果でした。

上記の検討をもとに、この論文では、
新型コロナウイルスの基本再生産数は「23くらいでは」と結論づけています。

ちなみに今回検討された12の研究のうち、9つは中国のみを対象とした研究。
残り3つは、中国以外の国も含む研究でした。
論文によって、基本再生産数の値はバラついていました。
一番低い値だと、
1.4。一番高い値だと、6.49

基本再生産数は「どれくらい、周りにうつるか」の指標。
つまり、その感染症が今どのくらい流行っているか。
すでに感染した人がどれくらいいるか。
人口密度がどのくらいなのか。
これらによっても、かなり異なってくる値です。

今後も地域や集団によって、いろいろな値が報告されてくると思います。

 

日本では「1.7」(20203月時点)

ちなみに日本では「1.7」、つまり新型コロナウイルスの方が1人いると、
新たに1.7人がかかる可能性がある、という数字が出ています

これは2020年3月21日~3月30日の、診断確定例からの算出によるものです。
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020年4月1日)

これもやはり、今後の感染がどれくらい広まるか、検査がしやすくなるか、
隔離や外出制限がより厳しくなるか、など様々な状況で変わりうる値です。

 

ダイアモンドプリンセス号では乗客の18%が感染

ちなみに、ダイアモンドプリンセス号でのデータが、国立感染症研究所から報告されています。
国立感染症研究所「現場からの概況:ダイアモンドプリンセス号におけるCOVID-19症例」

2020年1月20日に横浜港を出発したクルーズ船において、
1月23日から咳をしていた乗客が1月25日に香港で下船、1月30日に発熱し、
2月1日に新型コロナウイルス陽性になりました。
この経過をうけて、2月3日に横浜港に帰港した後、
順次、全員の咽頭ぬぐい液が提出されました。

(基本再生産数という概念とは違いますが、)
このクルーズ船に乗っていた人全体で、どれくらい感染者が出たかという割合が報告されています。

乗客乗員あわせて3711名全員にPCR検査をおこなった結果、
696人、つまり約19%が陽性だったということです。

これは先ほどの基本再生産数、つまり1人からどれくらい他の人にうつすか、
という概念とはことなるものです。
が、少なくとも1人の新型コロナウイルス患者がいたと考えられる、
しかも人の流動のない集団において、最終的にこれくらいの感染者が出る、
という一つの値としては参考になるかと思います。


「百日咳・麻しん・おたふく」のほうが10倍うつりやすい可能性

総じて、新型コロナウイルスの基本再生産数は「1~3」に収まっているようですが、
これは他の感染症とくらべて、うつりやすいといえるのでしょうか。

以下は、主な感染症の基本再生産数です。

百日咳  16~21
麻疹   16~21
ムンプス 11~14
水痘   8~10
風疹   5~9
季節性インフルエンザ 2~3

「わが国におけるプレパンデミック ワクチン開発の現状と臨床研究」
(国立感染症研究所 感染症情報センター 平成20年度 感染症危機管理研修会 プログラム4資料)

 

百日咳や麻しん、おたふくが、かなり高い数字になっています。
実際に数年前に、百日咳や麻しんが流行したことがニュースになりました。風疹も忘れてはいけませんね。

しかしいずれも、ワクチンがあります。
ワクチンを打つ人が多ければ多いほど、感染や流行をおさえられる感染症です。
(そもそも、そういう感染症をターゲットにワクチンはつくられるわけですが。)

新型コロナウイルスに対してワクチンができるかなどは、まだまだ分からないところですが、
今後さらに感染が拡大し、基本再生産数が高くなるようであれば、
ワクチン開発も必須の対応になってくる可能性はあります。

 

いつもこうした議論につきまとうのは、結局、
新型コロナウイルスをどこまで診断できているのか、という問題です。

大人や子どもをふくめて、新型コロナウイルスにかかって無症状の人は一定数います。
感染を疑っても、いろいろな理由で検査までたどり着かないケースもあります。
そして、検査をして陰性とでても、
偽陰性の可能性(つまり本当は感染している可能性)もあります。

 

PCR検査がそもそもどれくらい信用できる検査なのか。
PCR検査のほかに、診断に使える検査はあるのか。
これらについても、今後記事にしていきます。

 

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