小児科医はどんなときに、子どものコロナを疑って、検査をしているのか。

子どもの新型コロナウイルスについては、
微熱だけ・1日だけなど、はっきりしないことが多く、
症状からは判断が難しいことは、以前も触れました。

子どもがコロナにかかると、どんな症状が出るの?

 

そして「子どもだからといってコロナにかかりにくいわけじゃなさそう」
という点についても、記載しました。

子どもは、コロナにかかりやすいのか?

この状況で、じゃぁ結局、
小児科医はどんなときに子どものコロナを疑って、検査を出しているのか。
文献などのデータをもとに、お伝えできればと思います。

 


PCR
検査でも、陽性の患者さんを30%くらい見逃す可能性。

ウイルスに感染している患者さんを、どれくらい残さず見つけられるか。
感染症学では、検査の「感度」などと表現されるものです。

新型コロナウイルスについて、現在行われているハナやノドのPCR検査は、
感度が70%くらいでは、と言われています。

(”Sensitivity of Chest CT for COVID-19: Comparison to RT-PCR.”)

 

ものすごいザックリ言うと、
「本当はコロナに感染しているけど、PCR検査を受けて「陰性」と出る人が30%います」
ということです。

この数字をどう受け止めるか。
ちょっとここで、ほかの感染症の検査の、感度を見てみましょう。

たとえばインフルエンザやRSウイルス。
これらは、コロナと似たような感じで、鼻から棒をつっこんで「鼻腔ぬぐい液」で検査します。
(ただしPCRといってウイルスを増殖させる検査ではなく、
5~10分で結果がわかるような「迅速検査」です。)

インフルエンザは感度 83~98 %、RSウイルスは感度 83~98 % です。
(細川 直登、感度と特異度からひもとく感染症診療のDecision Making、文光堂(2012年))

 

どうでしょうか。
「コロナのPCRは、インフルエンザやRSウイルスの迅速検査よりも、
感度が低い=見逃しが多くなっちゃうのか。」
と思われる方もいれば、
「あれ、インフルもRSも低いと80%くらい、つまり20%くらいは見逃してたのか。」
と思う人もいるかも知れません。

いずれにせよ、どんな感染症の検査でも、
絶対100 %見逃しません!という完璧な検査はありません。
検査について考察する以上、これは外せないポイントです。

 

 

「陰性(-)→陽性(+)」は小児でも報告あり。

大人では、一度陰性(-)になったコロナPCRの検査が、
ふたたび陽性(+)になった例が複数あり、
ニュースなどでも聞かれた方もいると思います。
2回陰性(-)だったけど、3回目で再び陽性(+)になった例も報告があります。

(”Positive RT-PCR test results in patients recovered from covid-19.”)

 

この「陰性(-)→陽性(+)」、子どもでも報告があります。

“Clinical characteristics of 24 asymptomatic infections with COVID-19 screened among close contacts in Nanjing, China.”
無症状のコロナ 24人の報告、うち6人が子どもです。
そのうち14歳の女の子は、最初にPCRで陽性(+)となった日から、
7日目に陰性(-)→9日目にまた陽性(+)→12日目に陰性(-)→14日目にまた陽性(+)
となりました。

・・・とりあえず、ものすごい鼻につっこまれてます。
そしてこのような例をみると、やはりPCRは検査1回での「陰性 or陽性」を、
にわかに信じられなくなります・・・。

だからPCRは意味がない、とかそういう話ではなく、
ではなぜ検査をしようと思ったのか。検査結果をどう解釈するか。
その結果によってお子さんや周りの人への対応をどう考えるか。
力量が試されるよね、という話です。

 

「重症化のリスク+社会的な影響」で必要性を判断

子どもは無症状のことも多い、じゃあ全員に検査するかといわれると、
物理的にそんなことは不可能なわけです。
そもそも、小さなクリニックでは、検査を提出するときに必要な全身の感染防護服は用意できませんし、
病院でも全員のお子さんに毎回用意するほどの医療資源はありません。

実際の現場でも、どんな症状のお子さんで、
どこまで疑って、いつ検査しているかは正直、医療機関によってバラバラだと思います。
患者さんの経過もまちまちですし、医療資源の状況も様々です。

ただし、だいたいのポリシーは共通するものがあるのでは、と思います
(以下はガイドラインなど明確な文章があるわけではなく、あくまで一人の小児科医としての見解です。)

 

(コロナに限らず)あるお子さんに感染症の検査をするというときは、大きく2つの観点があります。
①お子さん自身の問題 と ②お子さんの周り(園や家族、医療機関にいる他の人)の問題 です。

 

お子さん自身の問題

コロナの場合、たとえば成人では、高血圧や糖尿病・肺の病気などがあると、
重症化するリスクがあると言われています。

小児においても、たとえば重症例をあつめた報告で、
その中でさらにICU治療を受けた例は、
水腎症や白血病などの基礎疾患・合併症があった
と報告されています。

(”Clinical features of severe pediatric patients with coronavirus disease 2019 in Wuhan: a single center’s observational study.”)

ほかにも先天的な病気などで、
(コロナ以外にも)感染症に弱いと考えられる病気のお子さん
もいます。

また、特に何歳くらいのお子さんが重症化しやすいという報告はありませんが、
3歳未満のお子さんが重症化の割合が高いのではないかという報告もありますので、
こうした年齢の要素も絡んでくる
と思います。

(”Clinical Characteristics of Children with Coronavirus Disease 2019 in Hubei, China.”)


こうした事実を踏まえた上で、コロナによる重症化のリスクがあると考えたお子さんに対しては、
できる範囲でコロナの診断をつけにいくことに、意味がでてきます。

※「子どものコロナがそもそも重症化するのか」については、別記事に記載しています。
子どものコロナは重症化するのか?)

 

もうひとつの観点。

 

お子さんの周り(園や家族、医療機関にいる他の人)の問題

お子さん自身というよりは、そのお子さんの「周り」の人たち、を考えた観点です。
お子さん自身は(発熱していても)元気。
ただ、お子さんから園の友だちや、家族に感染させるリスクがある。
それを踏まえて、検査をするかどうか考える
、という観点です。

たとえばインフルエンザやアデノウイルス。
いずれもウイルスなので、かりに診断がついたとしても、特別な治療はありません。
なのでお子さん自身にとっては(元気な場合)検査しなくても、
解熱剤などで対症療法でのりきれれば、別にそれでOK
なのです。


ただし、そのお子さんが保育園に通っている場合。
次の日に熱が下がってすぐに登園してしまった場合、
インフルエンザを他のお子さんに感染させてしまう可能性が高いです。

「感染症の出席停止期間」として定められているウイルスは、
個人という観点よりは、こうしたお子さんの周囲のことを考えて、
検査をする意味が出てくるケースが多いです

さらに、お子さんの家族が、たとえば医療従事者である場合。
仮にお子さんやご家族がコロナに感染していても、
それを見逃した場合、ご家族が働きつづけることで、
医療機関内にコロナを感染拡大させるおそれがあります。

こうした場合も、検査を前向きに検討するひとつの要因になります。

※上記の逆で、お子さんの周りの友達や家族が、
コロナ感染者だと判断されている場合、
しかも濃厚接触だったと判断されている場合も、同様です。
検査を前向きに検討します。


一方で、そもそも鼻に棒を突っ込んで検査する→泣き叫ぶ・・・
の一連の流れで、相当の涙や唾液が、診察室に舞っています。
体液がでるような迅速検査をするということは、
それだけ、院内感染を広めうるリスクにもなっているということです。

院内で感染が広まれば、当然、そこに訪れる他のお子さんにも感染するリスクは高まります。
実際に今回の新型コロナを受けて、
迅速検査を一切やらないと決めた医療機関も複数あります。


症状からだけでは、子どものコロナを疑う事はできない。
そうであれば、目の前の子どもがすべてコロナにかかっている、と仮定して、
少しでも院内・院外感染を防ぐ対策として、一つの望ましい方針だと思います。

 

仮に全例PCR検査できたとしても、ハッピーじゃない

ちなみに、子どもでコロナを疑った場合、いつPCR検査を出すかも、議論があるところです。

 

一つの目安として、たとえば、
コロナ感染者との接触~発症までは2~10日間(平均 6.5日間)、
発症~PCR陽性までは、鼻腔・咽頭で4~48時間、便で3~13日
という小児の報告
があります。

(”A case of children with 2019 novel coronavirus infection : clinical and epidemiological features.”)

また小児は研究の対象にふくまれていない論文ですが、
発症直後から高いウイルス量が検出され、しかも無症候性の患者でも、
有症状者と同様の、ウイルス量が検出されたとする報告
もあります。

(”SARS-CoV-2 Viral Load in Upper Respiratory Specimens of Infected Patients.”)

 

でも、無症状者や発熱直後の小児全員にPCR検査を出せる物理的な状況にはないのです。
そしてもし仮に、そうやってバンバン検査を出せる環境にあったとしても、
すべてのお子さんに素晴らしい利益がある!とは言い難いです。

棒を鼻に突っ込まれて痛い、というのもありますが、
それ以上に、新型コロナの特効薬は(現時点では)ないからです。

仮にコロナだったとしても、発熱1日目でおさまっちゃって、
自然に治っちゃえば、コロナの診断をつける検査をしなくても、
別にお子さんにとっては何も困ることはありません。
また今後ますます病床数が確保できなくなると、
陽性がでたお子さんでも軽症であれば、自宅待機となる可能性が高いです。
医療資源の問題で、やむを得ずすでにこのような対応をとっているケースも少なからずあると思います。

検査しなかったけど実はコロナだった、という子どもから、
周りの子どもにうつっちゃうじゃないか!と言われれば、それはそうです。
でも、もはや感染経路=原因となった特定の個人を特定できないところまで、感染は広がりました。

「たとえAくんが検査を受けて陽性→そのあとBくんが発症・陽性になった」としても、
Bくんが発症したのが本当にAくんだけのせいなのかというと、

そういう結びつけはできないくらい、Bくんのまわりにもウジャウジャと見えない感染者がいるわけです。
検査して感染源を特定する、という目的も果たせないところまで、感染は拡大しています。

 

 

どんな検査にも限界あり。
1人1人が「もうコロナにかかっているかも」という前提で行動を。

今後、PCRの感度もまた数字が変わっていく可能性もありますし、
血液中のウイルスに対する抗体価を見る検査(IgMやIgG)が広まると、
また状況も変わってくると思います。

しかしどんな状況にあっても、
コロナに限らず、検査というものはいろいろな限界があるもの。
検査を受ける/受けない、うんぬんの前に大事なことは、
あらためて1人1人が「もうコロナにかかっているかも」という前提で行動することです。

そして自分で情報を集めて判断しつつ、
相談すべき窓口に相談する、ようにしましょう。
コロナ情報:ホームページ・web一覧

さて、コロナで行われる検査として、
CT検査が思い当たる方もいると思います。

コロナにおけるCTや肺炎の意味、
についてもまた記事にしていきます。

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