妊婦がコロナに感染すると、赤ちゃんにどんな影響があるか?

免疫機能が低下する妊婦さんにおいて、
コロナウイルスに感染しないためにできること。
こちらは前回紹介しました。

コロナ感染拡大。妊婦ができること。

それでも、ここまで感染が広まってしまうと、正直もうどこにウイルスがあるのかわからない。
自分もただ症状がないだけで、もうウイルスを持っているかもしれない。

もし仮に、妊娠している状態でコロナに感染してしまったら、何が起きるのか。
感染を100%ふせぐことはできなくても、
科学的根拠をもってあらかじめ情報を手に入れておくことは、
心身ともに平穏にすごすための大事な一つの方法
だと思います。

妊婦さんがコロナウイルスに感染すると、赤ちゃんにはどんな影響があるのか。
今回はこれをテーマに見ていきたいと思います。

 

妊婦赤ちゃんの垂直感染は、当初は「ない」と言われていた。

コロナに感染した妊婦さんから生まれた赤ちゃんについて、
最初のほうは「赤ちゃんには感染しなかった」とする報告がみられました。
文献を5つ、見ていきましょう。

 

“Pregnant women with new coronavirus infection: a clinical characteristics and placental pathological analysis of three cases.”

感染した妊婦3人から生まれた新生児について、全員、咽頭でのコロナウイルスは陰性だった。
1人のみ低出生体重児でしたが、全員肺炎もなく、全身状態良好
なおお母さんの胎盤からも、ウイルスは検出されなかったと。

“Coronavirus disease 2019 (COVID-19) during pregnancy: a case series.”

感染した妊婦3人から生まれた新生児について、
咽頭・臍帯血・血液・尿・便すべて、コロナウイルスは陰性

低出生体重や早産、新生児仮死もなし。
確認できた症例では、母乳・膣・胎盤もウイルス検出されなかったと。

 

“Clinical characteristics and intrauterine vertical transmission potential of COVID-19 infection in nine pregnant women: a retrospective review of medical records.”

感染した妊婦9人から生まれた新生児について、
咽頭・臍帯血・羊水・母乳すべて、コロナウイルスは陰性。

新生児仮死もなし。
なお低出生体重が 22%、早産が 44%の報告はありますが、

詳細は不明で、コロナと関連あるかも不明です。

 

“Clinical analysis of 10 neonates born to mothers with 2019-nCoV pneumonia.”

感染した妊婦9人から生まれた新生児(計10人)について、
全員、咽頭でのコロナウイルスは陰性

なお34週5日で出生した1名の赤ちゃんのみ、死亡の報告でした。
分娩30分後に呼吸困難があり、多臓器不全になり、生後9日目に死亡したと。
これ以外の詳細は不明であり、コロナと関連あるかも不明です。

 

ラスト、もう1つ。

 

“Infants born to mothers with a new coronavirus (COVID-19).”

感染した妊婦4人から生まれた新生児について、
3人とも鼻咽頭でコロナウイルスは陰性(1例は検査できず)。

低出生体重や早産、新生児仮死もなし。

1人のみ新生児多呼吸があったようですが、生後3日間かけて呼吸状態はよくなり、
生後7日目にNICUを退院しました。
この新生児多呼吸が、コロナと関連あるかは不明です。
そもそも帝王切開でうまれたお子さんなので、
一定の割合で新生児多呼吸を起こすリスクはあります。

早産や多呼吸、極端な例では死亡例もあるのが気になりますが、
一応、咽頭や臍帯血などのウイルス検査では陰性であり、
妊婦新生児への感染はなかった
という流れでした。

そもそもコロナ感染がないにしても、一定の割合で、
早産や多呼吸などの合併症は起こりうるため、
すべての結果をコロナに結びつけるわけにもいきません。

 


最近は「妊婦赤ちゃんへの感染もあるのでは?」とする報告も複数。

一方で、妊婦→赤ちゃんへの感染がありうるのでは、というケースも最近は出てきました。
文献を3つ、見てみましょう。

“A case report of neonatal 2019 coronavirus disease in China.”

感染した妊婦から生まれた赤ちゃんが、咽頭でウイルス陽性になったという報告です。
お母さんは、妊娠40週で発熱し、肺炎像+血液検査で炎症反応も高値でしたが、咳はなかったようです。

感染対策のため、帝王切開で生まれた赤ちゃんは40週・3205g、新生児仮死もなく、元気でした。
発熱もなかったですが、出生36時間後に、咽頭でウイルス陽性が判明しました。
生後6日目に肺炎像もありましたが、その後は改善傾向で、生後17日目で咽頭ウイルスも陰性になり、退院

 

“Neonatal early-onset infection with SARS-CoV-2 in 33 neonates born to mothers with COVID-19 in Wuhan, China.”

感染した妊婦33人から生まれた赤ちゃんのうち、3人がコロナウイルス陽性になった報告です。

お母さん・赤ちゃん全員に発熱と肺炎像があり、
赤ちゃん3人とも、生後2日目に咽頭や便でコロナウイルスが陽性になりました。

3人のうち2人の赤ちゃんは、生後6日目にコロナウイルスが陰性になり、退院しました。

残りの1人の赤ちゃんは、312日の早産で、新生児仮死と敗血症がありましたが、
生後7日目にウイルス陰性になり、生後14日目に退院。

新生児仮死+敗血症の1人については、コロナウイルスというよりは、
早産児にみられる一般的な経過のひとつではないかという見解でした。

 

ラスト、もう1つ。

“Possible vertical transmission of SARS-CoV-3 from an infected mother to her newborn.”

感染した妊婦から生まれた赤ちゃん1人の血液を調べたところ、
コロナウイルスの抗体価があがっており、妊娠中に感染した可能性があるのでは?という報告
です。

お母さんは発熱3日目でCT肺炎像あり、鼻咽頭でコロナウイルス陽性。
なお膣や母乳からはウイルスは検出されず。

お母さんが発症して23日目に、感染防御対策をしながら、帝王切開で赤ちゃんが生まれました。
37週3120g、新生児仮死なし、CTも肺炎像なしでしたが、
生後2時間での血液検査で、コロナウイルス抗体価の上昇がみられました。
なお赤ちゃんの鼻咽頭で5回検査されましたが、すべてコロナウイルス陰性だったそうです。
全身状態は良好で、生後25日目に退院

 

先ほどと違って、妊婦→赤ちゃんの感染が疑われるケースの紹介でした。
赤ちゃんに感染した場合でも、経過がよかった報告も複数あります。

また、鼻咽頭以外にも、血液で抗体価を調べた報告がでてきたのは、意義深いと思います。
成人も含むデータですが、抗体価も十分に、コロナ感染を診断・除外できるのでは、という報告があります。
(たとえばELISA法だと、感度82.4%・特異度 100%)

“Evalution of enzyme-linked immunoassay and colloidal gold-immunochromatographic assay kit for detection of novel coronavirus (SARS- CoV-2) causing an outbreak of pneumonia (COVID-19)”

 

もしかしたら、前述の「感染しないのでは」としていた5つの報告も、
赤ちゃんの血液で抗体価の検査をしたら、もしかしたら陽性だった可能性も
ありえます。


そもそも出産って、本当に何が起こるかわからない。

 

お母さんやお子さんがコロナウイルスに感染していなかったとしても、
出産は本当に、医療従事者も予測しえないことが起こります。

再度になりますが、すべての結果をコロナウイルスに結びつけるのは短絡的です。

また、コロナウイルスにかかったお母さんから生まれた赤ちゃんが今後、
問題なく成長・発達するか、といった、長期的な予後についても現時点ではわかっていません

お子さんに感染する「かもしれない」。
コロナの影響が赤ちゃんの発育にどう影響するかは「わからない」。
どうしても現時点ではもやっとした結論になってしまい、
不安がぬぐえない方もいらっしゃると思います。

でも、情報源がはっきりしない情報にむやみにさらされて不安になるよりは、
科学的に正しい情報を、しっかりと見つめることが大切な時期ではないでしょうか。

正しく知り、正しくおそれ、正しく向き合う。
少しでもそのお手伝いができれば幸いです。

 

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